しながわ在宅クリニック

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うつ病の薬物療法以外の治療法、電気けいれん療法(ECT)について

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現在、抗うつ薬による薬物治療がうつ病治療の一般的な治療法ですが、その薬物治療が一般的になるよりも前からある治療法があり、それが電気けいれん療法(ECT)です。頭部に電気を流して痙攣を起こすことで脳の機能を正常なものにします。今は薬物治療が第一選択となりますが、緊急性が高い患者さんや薬物治療で効果が得られない患者さんなどに使用され、切り札と考える医師も少なくありません。この記事ではECTとはどういうものなのか、メリットとデメリット、費用や安全性、ECT施術の流れについてお伝えします。

電気けいれん療法(ECT、m-ECT)とは

電気けいれん療法(ECT)は、頭部に電気を流すことで痙攣(けいれん)を起こし、脳の機能を回復させる治療法です。うつ病、双極性障害、統合失調症、パーキンソン病などの治療に用いられます。うつ病に関しては、心理療法や薬物療法などで効果が見られない患者さんや、自殺の危険が切迫しているなど重度のうつ症状がある患者さんに対して適応を検討します。

電気けいれん療法の歴史は古く、1930年代から研究が始まり、薬での治療法が現れるまで精神疾患の主な治療法となっていました。動物での実験に始まり、試行錯誤の末、治療法として確立されました。そのような歴史もあり、作用機序(仕組み)については解明されていません。作用機序が不明と聞くと不安に感じるかもしれませんが、現在に至るまで多くの患者さんを治療してきた実績のある治療法ですのでご安心ください。

全身麻酔をし、筋弛緩剤を用いて体のけいれんを抑える方法をm-ECT(modified electroconvulsive therapy)と言い、修正型電気けいれん療法とも呼ばれます。安全性の観点からも現在はこの方法が主流です。治療の施術は専用の処置室で行う医療機関もあります。

ECTのメリット、デメリット

ECTは次のようなメリットがあります。

  • 薬で効果がなかった患者さんにも治療効果が得られる可能性がある
  • 薬の服用が難しい患者さんにも治療可能
  • 重いうつ症状にも効果が期待できる
  • 短期間で治療効果が得やすい

薬とは異なる作用の仕方をするため、薬物治療での効果が得られなかったり、副作用などで服薬が難しかったりする患者さんに治療効果が期待できます。また、緊急性のある重度のうつ症状の患者さんに対しては、第一選択の候補となるくらい治療効果への信頼があります。

ECTは次のようなデメリットがあります。

  • 健忘などの副作用がある
  • 検査や薬の調整など事前準備が必要
  • 入院が必要な医療機関もある
  • 外来の場合は週に2~3回、計6~12回程度の通院が必要

ECTは日々研究が重ねられ、現在では安全性の高いものとなっています。とはいえ、副作用はそこそこ発生し、特に健忘(記憶障害)は比較的多く見られます。治療の前準備として、全身麻酔を安全に行えるかを確認するための検査が必要です。また、治療効果を最大限発揮するためや副作用を抑えるために、リチウムや抗うつ薬、抗てんかん薬の中止、抗不安薬の減薬をしていきます。治療頻度が多いため、頻繁な通院、あるいは入院が必要であり、学校に通っている方や仕事をしている方、病状によってはここがネックになるかもしれません。

ECTが向いている方

ECTは抗うつ薬などの薬物療法での効果が乏しい方や、副作用によって服薬が難しい方に向いています。1~2ヵ月の通院あるいは入院が必要になりますが、そこをクリアできる方は検討してみると良いでしょう。また、食事を取ることができない、自殺の危険性があるなど、早急な改善が必要な方や、過去にECTでうつ症状が改善した方にもECTが向いています。

ECTの費用

ECTは保険適用となっており、2024年3月時点で1回の治療は2,800点。これは3割負担で8,400円となります。麻酔を専門の医師が行った場合は+900点(3割負担で2,700円)。これらに入院費用や検査費などが必要になってきます。

治療回数や入院期間などによって合計の費用は変わってくるので、治療を受ける医療機関に確認するのが大事です。場合によっては、高額療養費制度など医療費助成の対象になるので、これらについても治療を受ける医療機関に聞いてみましょう。

ECTの安全性・副作用

頭部に電気を流すと聞くと危険なイメージがあるかもしれませんが、ECTによる死亡、重篤な副作用は5~10万回に1回程度と言われています。これは出産に伴う危険よりも低い確率であり、安全性は高いと言えるでしょう。

ただし、軽いものも含めると何らかの副作用が見られることはよくあります。副作用で多いのは記憶障害で一時的あるいは長期の健忘が見られます。他には短時間で治まる副作用として、頭痛、筋肉痛、めまいなどがあります。ECTはうつ状態を回復させるため、双極性障害の患者さんの場合、躁転することもあり注意が必要です。

また、麻酔から覚醒する際に混乱、意識がもうろうとするせん妄もよく見られます。全身麻酔による副作用として、血圧の上昇や下降、不整脈などがあります。これらは治療中に観察し、異常があれば適宜対応されます。

ECTの流れ

ECTを受ける前にまずは医師から説明を受け、ECTを受ける意思があるという同意書に署名をします。先ほどの安全性、副作用にも記した通り、安全性が高いとは言えリスクがゼロではありませんし、健忘などの副作用は出る可能性があります。その辺を踏まえて、ECTを受けるかどうかをしっかり考えて判断しましょう。この同意はいつでも撤回可能です。

ECTを受けることになりましたら、ECTを実施する前に、ECTや麻酔を行っても問題がないか、心電図や頭部CT、血液検査などの検査を行います。また、副作用のリスク回避やECTの効果を高めるため、抗てんかん薬や抗うつ薬、抗不安薬などを中止、減薬していきます。ここまでがECTを受ける前の準備期間です。

ECTの処置を受ける日は全身麻酔を安全に行うため、ECTを実施する6時間前から飲食禁止です。これは嘔吐などによる、誤嚥や気道閉塞、肺炎のリスクを回避するため。処置室にて、心電図や酸素飽和度、脳波などのモニタリングを開始し、麻酔をかけていきます。全身麻酔ですので、患者さんが記憶できるのはここまでです。麻酔が効いたことを確認できたら、筋弛緩剤を投与します。筋弛緩剤の効果が確認できた後、頭部への通電を行います(ECTの実施)。

麻酔から回復し、心電図などで異常がないことが確認できたら、回復室へと移動させます。看護師が付き添い、血圧の測定や状態の確認をし、覚醒したと判断されたらECTの一連の処置は終了です。このECTの実施を週に2~3回、計6~12回程度行います。

ECTについてお伝えしました。薬物療法で期待した効果が得られなかった患者さんにとって希望の光になると思います。治療には全身麻酔が必要となり、やや規模の大きな物となるため、気軽に受けるというのが難しいのは痛いところです。ECTは薬物療法が確立するよりも前から行われている歴史ある治療法であり、安全性に関しても日々向上しています。実施できる医療機関に限りがありますので、気になった方は現在診察を受けている医師に相談してみましょう。

関連ブログ記事

抗うつ薬について
うつ病の薬物療法以外の治療法、TMS治療について

関連リンク

修正型通電療法(m-ECT)(神奈川県立精神医療センター)
m-ECT(修正型電気けいれん療法)について(福島県立ふくしま医療センターこころの杜)
修正型電気けいれん療法(mECT)(福岡県立精神医療センター 太宰府病院)
ECTの疑問にお答えします(長崎県精神医療センター)
パルス波治療器(Thymatron)を使用した m‐ECT 施行のフロー図(厚生労働省)

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