しながわ在宅クリニック

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抗精神病薬について

投稿日:2022年10月13日

主に統合失調症の治療に使われる抗精神病薬。過剰に分泌されるドーパミンを抑えることで、幻覚や妄想、興奮状態を改善する薬です。この記事では、抗精神病薬の仕組みや効果、日本で承認されている薬剤、副作用、服用の注意点などについてお伝えします。

抗精神病薬の仕組み・効果

抗精神病薬は神経伝達物質であるドーパミンの流れを抑える働きをします。具体的にはドーパミンを受け渡しする部分の、受ける側に蓋をするという動きです。それによりドーパミンが過剰に分泌されてしまっている状態を改善します。次のような症状に対して効果が期待できます。

  • 幻覚や妄想
  • イライラ、興奮状態

クロザピン(クロザリル)登場以降に開発された薬を非定型抗精神病薬と呼び、セロトニンなど、ドーパミン以外の神経伝達物質にも働くようになっています。その結果、次のような症状に対しても効果が期待できます。

  • 思考がまとまらない、集中できない
  • 意欲、活動性の低下

抗精神病薬を使う病気

抗精神病薬は主に統合失調症に使われます。統合失調症は脳の神経伝達物質のバランスが崩れることが関係していると言われており、その崩れたバランスを抗精神病薬で整えるのです。

アリピプラゾール(エビリファイ)など、薬によっては気分を安定させる作用があることから、双極性障害に使われることもあります。他にも、不安感やうつ状態の改善、認知症に使われる薬もあります。

抗精神病薬の種類

抗精神病薬はクロザピンが登場するよりも前に開発された定型抗精神病薬と、クロザピン以降に開発された非定型抗精神病薬に大きく分けられます。定型抗精神病薬はドーパミンの流れを抑える作用が強い傾向があり、幻覚や妄想などの陽性症状に効果が期待できます。反面、ドーパミンを止めすぎることで起こる錐体外路症状などの副作用が起きやすいのも特徴です。

非定型抗精神病薬はセロトニンなど、ドーパミン以外の神経伝達物質にも働くことで、陽性症状以外にも効果が期待できます。作用の仕方から、SDA、MARTA、DSS、SDAMに分類されます。

SDA

セロトニン・ドーパミン拮抗薬。セロトニンとドーパミンが拮抗することに着目し、セロトニンを抑えることで、ドーパミンも抑えます(ドーパミンを抑える成分も入っています)。陽性症状に効果的で、認知症に対しても使用されます。

MARTA

多元受容体作用抗精神病薬。複数の受容体に作用することで機能する薬です。鎮静作用が強く、様々な受容体に作用することから、気分安定化作用、抗うつ作用もあります。花粉症の薬などでも知られる抗ヒスタミンと同じ作用も持つため、眠気が強くなりやすいです。

DSS

ドーパミン受容体部分作動薬。ドーパミンを抑えつつも、ドーパミンが不足しているところには活性化させるという働きをする薬です。それにより、陽性症状、陰性症状のどちらにも効果が期待できます。また、双極性障害などの気分の波を抑えたい疾患にも使われます。比較的、副作用は少ないです。

SDAM

セロトニン・ドーパミン・アクティビティ モジュレーター。DSSにセロトニンを抑える効果を足したような薬です。セロトニンを抑えるのはSDAでも記したように、拮抗する動きを利用し、ドーパミンを抑えるため。陽性症状、陰性症状のどちらにも効果が期待できます。DSSと同様に、比較的副作用は少ないです。

抗精神病薬の紹介

非定型抗精神病薬を日本で承認された新しい順に、定型抗精神病薬は系統でまとめてご紹介します。

ルラシドン

SDAに分類。2020年に承認され、ラツーダの商品名で販売されています。陽性症状に対する効果は強くありませんが、陰性症状や認知機能の改善、気持ちを安定させる効果が期待できます。空腹時と食後で吸収のされ方に1.7~2.4倍の差があるため、食後に服用するのが大事です。

ラツーダ(くすりのしおり)

ブレクスピプラゾール

SDAMに分類。2018年に承認され、レキサルティの商品名で販売されています。陽性症状、陰性症状に効果が期待できます。鎮静作用はあまり強くないです。気分安定作用も期待できるため、双極性障害にも処方されます。

ブレクスピプラゾール:レキサルティ(おくすり110番)

パリペリドン

SDAに分類。2010年に承認され、インヴェガの商品名で販売されています。陽性症状の改善に大きな期待ができ、陰性症状にも効果が期待できます。リスペリドンを改良して作られた経緯があり、リスペリドンよりも眠気やふらつきの副作用が軽減されています。

パリペリドン:インヴェガ(おくすり110番)

クロザピン

MARTAに分類。2009年に承認され、クロザリルの商品名で販売されています。開発は1960年代と歴史があり、クロザピン以降に開発された薬を非定型抗精神病薬と呼びます。他の抗精神病薬で症状が改善しない場合(治療抵抗性統合失調症)にも効果が期待できる唯一の薬です。副作用の注意も必要なため、切り札として扱うケースが多いです。

クロザピン:クロザリル(おくすり110番)

ブロナンセリン

SDAに分類。2008年に承認され、ロナセンの商品名で販売されています。ドーパミンを抑える作用が強いため、陽性症状の改善に期待ができます。また、眠気や代謝系の副作用が少ないです。空腹時と食後で吸収のされ方に差が出るので、食後に服用するのが大事です。抗精神病薬としては珍しくテープ剤があります。

ブロナンセリン:ロナセン(おくすり110番)

アリピプラゾール

日本で唯一DSSに分類。2006年に承認され、エビリファイの商品名で販売されています。低用量で気分を上げ、高用量で気分を抑える効果が期待できることから、統合失調症だけでなく、うつ病や双極性障害などにも使用します。副作用が少ない反面、鎮静作用が弱めです。

アリピプラゾール:エビリファイ(おくすり110番)

クエチアピン

MARTAに分類。2000年に承認され、セロクエルの商品名で販売されています。特に陰性症状や認知機能の改善に効果が期待できます。陽性症状への効果が緩やかな代わりに、錐体外路症状などの副作用が起きにくいです。副作用に関しては、眠気やふらつきが出やすい傾向があります。

クエチアピン:セロクエル,ビプレッソ(おくすり110番)

オランザピン

MARTAに分類。2000年に承認され、ジプレキサの商品名で販売されています。陰性症状の改善に期待ができ、気分の安定にも効果が期待できることから、うつ病や双極性障害の治療にも使われます。また制吐作用があり、抗がん剤副作用の吐き気を和らげるための薬として適応が認められています。

オランザピン:ジプレキサ(おくすり110番)

ペロスピロン

SDAに分類。2000年に承認され、ルーランの商品名で販売されています。陽性症状、陰性症状以外に、鎮静作用を持つため、落ち込みや不安に対しても効果が期待できます。副作用は起きにくいですが、高プロラクチン血症やアカシジア、眠気など、様々な副作用が同程度の割合で報告されています。

ペロスピロン:ルーラン(おくすり110番)

リスペリドン

SDAに分類。1996年に承認され、リスパダールの商品名で販売されています。陽性症状にしっかりと効果が出る他、抗躁効果も強いため、躁状態を中心とする双極性障害にも使われます。錐体外路症状や高プロラクチン血症の副作用がやや出やすい傾向があります。

リスペリドン:リスパダール(おくすり110番)

ブチロフェノン系

定型抗精神病薬の代表的な薬群。ドーパミンを抑える力が強いため陽性症状に効果を発揮する反面、パーキンソン症候群やアカシジアなどの副作用がやや多いです。ハロペリドール(商品名:セレネース)が今でも良く使われます。他のブチロフェノン系薬剤はブロムペリドール(インプロメン)、ピパンペロン(プロピタン)など。

ハロぺリドール:セレネース(おくすり110番)

フェノチアジン系

初めて抗精神病薬として使われたクロルプロマジン(商品名:コントミン)を含む薬群。鎮静作用が強く、不安や緊張の緩和に効果が期待できます。便秘や口の渇き、立ちくらみなどの副作用が見られます。フェノチアジン系の薬剤は、レボメプロマジン(レボトミン)、フルフェナジン(フルメジン)など。

クロルプロマジン:ウインタミン,コントミン(おくすり110番)

ベンズアミド系

ドーパミン拮抗薬であるメトクロプラミドを改良する過程でできた系列。スルピリド(商品名:ドグマチール)、スルトプリド(バルネチール)、ネモナプリド(エミレース)、チアプリド(グラマリール)の4剤が国内で処方可能となっています。系統としてまとめられていますが、効果の特徴はそれぞれ異なります。

スルピリド:ドグマチール,ミラドール,アビリット(おくすり110番)

スルトプリド:バルネチール(おくすり110番)

ネモナプリド:エミレース(おくすり110番)

チアプリド:グラマリール(おくすり110番)

抗精神病薬の剤形

抗精神病薬は様々な剤形で販売されています。一般的な飲み薬として、錠剤、カプセル、粉薬。水がなくても飲める、口腔内崩壊錠(OD錠)、液剤(水薬、シロップ剤)、舌下錠などがあります。珍しいものとしてはテープ剤がブロナンセリンで出ています。ここまでの剤形は患者さんが自宅で服用するタイプのものです。

クリニックで投薬するものとして注射剤があり、即効性があるもの、数週間と長く効果が続くものがあります。効果が長く続くものは、飲み忘れをしやすい患者さんなどに使います。また、血中濃度(体内の薬の濃度)が安定するため、副作用が軽減されるメリットもあります。デメリットは薬価が高い点です。

抗精神病薬はある程度の期間飲み続けるもので、服用のしやすさはとても大事ですので、剤形の希望がある場合は主治医に相談してみてください。

抗精神病薬の副作用

抗精神病薬の代表的な副作用は以下のようなものがあります(薬剤によって出やすい副作用が異なります)。

  • 錐体外路症状(EPS)
  • 高プロラクチン血症
  • 便秘、口の渇き
  • ふらつき
  • 眠気
  • 体重増加、メタボリックシンドローム

錐体外路症状、高プロラクチン血症はあまり聞きなじみがないかと思いますので簡単に説明します。

錐体外路は神経経路の1つで、身体の運動の細かい調整を行います。ドーパミンが必要な機関であり、抗精神病薬でドーパミンが遮断されてしまうことで、上手く身体の動きを制御できなくなってしまうのが錐体外路症状です。具体的には、筋肉がこわばって思うように身体が動かせない、手が震える、そわそわして落ち着かないなどの症状が出ます。

プロラクチンはホルモンの1つで、主に生殖面に作用します。ドーパミンが過度に抑えられるとプロラクチンが増えてしまい、その増えた状態が高プロラクチン血症です。高プロラクチン血症になると、女性では月経異常(生理不順、生理が止まる)、母乳が出るなどの症状、男性では胸が膨らむ、性欲減退などの症状が出ます。

抗精神病薬の服用について、注意点

統合失調症は症状が治まったからと服用をやめると再発の可能性が高まり、しかも再発を繰り返すと症状は悪化する傾向があります。統合失調症に限らず、抗精神病薬の服用終了とするかは慎重に判断をしなくてはなりません。ですので、自己判断で中断はせず、主治医の指示に従うようにし、服薬を続けたくないなど、思うところがあれば相談してください。

抗精神病薬は併用に注意が必要な薬もあります。診察時に服用している薬を主治医に伝えるようにしましょう。その情報を基に患者さんにあった薬を処方します。また、服用回数が多くて飲み忘れてしまう、副作用がつらいなど、指示通りに服薬するのが難しい場合も主治医に相談してください。剤形による工夫や副作用を抑える薬の処方、副作用が出にくい薬への変更など、服用を続けられるようにサポートしてくれるはずです。

抗精神病薬を服用するにあたり、喫煙やアルコールの摂取は避けるようにしてください。薬の効果が低下してしまったり、副作用が強く出てしまったりするためです。普段から喫煙やアルコールの摂取をしている方はいきなりやめるのは難しいと思います。その場合は主治医にその旨をお伝えください。

抗精神病薬についてお伝えしました。抗精神病薬全般に言えることを中心に記しましたので、薬剤ごとに効果の強弱、副作用の内容などは異なってきます。実際に抗精神病薬の処方を受けている方は、主治医や薬剤師の説明を聞き、用法用量を守るようにしましょう。副作用や服用回数など、継続して服薬するのが難しい場合は、主治医に相談してみてください。

関連ブログ記事

精神科でよく使われる薬

関連リンク

抗精神病薬(MSDマニュアル家庭版)
抗精神病薬(日経メディカル処方薬事典)
抗精神病薬のメカニズムと特徴(統合失調症ナビ)

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