暑くなってくると熱中症とともに聞く機会が多くなる脱水症。夏だけでなく、乾燥する冬や食中毒が増える梅雨時期にも注意が必要な病気です。この記事では、脱水症とはどういう病気なのか、症状や原因、予防と対策、脱水症になってしまった時の応急処置などをお伝えします。
脱水症とは
脱水症は、水や電解質などで構成されている体液が不足した状態のことを言います。詳しくは次項に記述しますが、脱水症になるとめまい、ふらつき、頭痛など様々な症状が出ます。医療機関での脱水症の治療は、失われた体液を経口あるいは点滴で補うのが一般的です。
暑さで汗を大量にかくことで水分が出ていきやすい夏、寒さから水分摂取量が減り、乾燥によって肌から水分が失われていく冬が脱水症になりやすい季節。また、食中毒シーズンも下痢や嘔吐で水分が失われやすいので要注意です。
夏になると、熱中症と脱水症を予防するように注意喚起がされます。熱中症は、高温多湿な環境に体が対応できずに、起きるさまざまな症状の総称です。熱中症になる原因の1つに、発汗などで水分が失われた状態である脱水症が入ります。そのため、熱中症予防には脱水症予防をするように言われることが多いのです。
脱水症の症状
脱水症は様々な症状が出ると前項でお伝えしました。詳細に挙げると下記のようなものがあります。
軽度
めまい、ふらつき、口の渇き、皮膚の乾燥
中等度
頭痛、吐き気、唾液や尿の量が減る、体温上昇、脈拍・呼吸の上昇
重度
意識障害、呼吸困難、けいれん、昏睡、錯覚、幻覚
重度の脱水症は命の危険もあるので、軽度の段階で水分と電解質を摂取して対処するのが重要です。軽度の段階で気づけると良いのですが、脱水症は「かくれ脱水」と呼ばれる、初期段階では自覚症状がない場合があります。発汗や気温室温など、客観的に考えて水分が失われていると思ったら、水分補給をするよう心がけましょう。また、小さいお子さんや高齢の方など、自身で判断が難しい方には周りの人が注意を払うようにしてください。
脱水症の原因
脱水症の原因として、以下のようなものがあります。
- 水分摂取が足りてない
- 暑い環境や激しい運動により発汗し水分が喪失される
- 下痢や嘔吐などで過度に水分が喪失される
- 加齢
発汗によって水分が失われるのは夏に多くある原因です。下痢や嘔吐などは、食中毒が流行る梅雨時、風邪や感染症などに罹りやすい冬に注意が必要。加齢に関して、筋力の低下により体内の水分量が減ってしまうこと、内臓の働きが低下することで体内の水分量のコントロールがうまくできなくなることや、のどの渇きに気づきにくくなることなど、いくつもの要因があります。
脱水症は、低張性脱水と高張性脱水の2つに大分されます。低張性脱水は、Na(ナトリウム)欠乏型脱水とも言われ、細胞外液のナトリウムなどの電解質が多く失われた状態。水分は足りていても起きるため、水は飲んでいたのに脱水症になったという場合は、低張性脱水の可能性が高いです。
高張性脱水は、水分欠乏型脱水とも言われ、体内の水分が不足することで発症します。脱水の言葉からイメージしやすいのは高張性脱水ではないでしょうか。高張性脱水は、自分で水分補給ができない乳幼児や高齢の方がなりやすいです。
脱水症の予防、対策
脱水症は軽度の段階で対処するのも重要ですが、脱水症にならないように予防することはもっと大事です。この項では脱水症の予防、対策についてお伝えします。
水分摂取
脱水症で一番効果的な予防は水分を摂ること。のどの渇きを感じたときは、すでに体内の水分が不足している状態なので、そうなる前に水分摂取をしましょう。汗をかきやすい暑い夏や、乾燥している冬は意識的に水分を摂るようにしてください。水分と一緒に塩分(電解質)を補給するのも大事です。
アルコール類は利尿作用等があるため、水分補給には適しません。飲み物以外にも、フルーツやゼリーなどでも水分補給は可能です。ご自身にあった形で、水分補給するように工夫すると良いでしょう。
適温環境を整える
脱水症の予防で水分摂取と合わせて、気を配りたいのが適した環境を整えることです。室内で暑かったり寒かったりする場合は冷暖房器具を使う、空気が乾燥しているのであれば加湿器を使うなど、快適な環境になるように調整しましょう。また、暑ければ薄着にするなど、衣服も工夫するようにしてください。
脱水症の応急処置
もし脱水症になってしまった場合の応急処置ですが、基本的には予防の延長になります。水分を摂ることと環境の調整ですね。水分を摂る際は、電解質も補うようにしましょう。経口補水液が適していますが、ない場合はスポーツドリンクなどでも良いです。経口補水液は塩分が高く、スポーツドリンクは糖分が高いので、高血圧や腎疾患、糖尿病などに罹っている方は注意が必要です。一度、担当医に脱水症になった場合はどうすれば良いか聞いておくと安心できるでしょう。
水分の補給は一気に飲まず、ゆっくりと少しずつ飲むようにしてください。また、あまりにも冷えたものは内臓への負担が大きくなるので、冷やすとしても冷蔵庫のドアポケット(5度~15度)くらいの温度にしましょう。
水分摂取、環境の調整をしても症状が良くならない場合、意識障害やけいれんなど重度の症状がある場合は医療機関で診断を受け、適切な治療を受けるようにしてください。
脱水症についてお伝えしてきました。脱水症はならないように予防ができる病気です。自分の感覚だけに頼らず、客観的に水分が失われてないかを意識し、適切に水分補給をするようにしましょう。もし脱水症の症状が見られる場合、軽度であればご紹介した応急処置を試し、症状が改善されなかったり、重度の症状があったりするときは、医療機関に診てもらうようにしてください。
関連リンク
「健康のため水を飲もう」推進運動(厚生労働省)
脱水 – 12. ホルモンと代謝の病気(MSDマニュアル家庭版)
水分だけとっても脱水予防にならない? | 食育活動(キユーピー)
気づきにくいお年寄りの脱水症|経口補水液オーエスワン(OS-1)(大塚製薬工場)
適切な水分補給を心がけましょう!|飲料アカデミー (コカ・コーラ)