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抗うつ薬について

投稿日:2023年10月9日

うつ病やうつ状態に対して使われる抗うつ薬。脳内の神経伝達物質に作用することで、落ち込みや意欲の低下、興味関心の低下を改善する薬です。作用の仕方でいくつもの種類が出ており、それぞれ期待できる効果が異なります。この記事では、抗うつ薬の仕組みや効果、日本で承認されている薬剤、副作用、服用の注意点などについてお伝えします。

抗うつ薬の仕組み・効果

抗うつ薬は脳内の神経伝達物質である、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンの受容体に作用して、脳内のバランスを整える薬です。それぞれの神経伝達物質が不足すると、セロトニンは不安や落ち込みが強くなり、ノルアドレナリンは意欲や気力の低下、ドーパミンは興味や楽しさを感じにくくなります。抗うつ薬によって、脳内のバランスを整えることで気分の落ち込み、不安、意欲の低下、興味の減退などの症状を改善すると考えられています。

神経伝達物質の不足を改善する主な仕組みとしては分泌を増やすものと、分泌された神経伝達物質の回収を阻害するものの2パターン。抗うつ薬は効果を感じられるまで2~8週間ほどかかります。

抗うつ薬を使う病気

抗うつ薬は名前の通り、主にうつ病、うつ状態に処方されます。セロトニンが増えることで不安感を軽減する効果があることから、パニック障害や社交不安障害などの不安障害にも使われます。また、ミルタザピン(リフレックス、レメロン)、アミトリプチリン(トリプタノール)、ミアンセリン(テトラミド)など、睡眠を促す作用がある抗うつ薬もあり、そのような薬は睡眠障害にも用いられます。

抗うつ薬の種類

抗うつ薬は成分、作用の仕方によって次のような種類があります。上にあるものが古く、下に行くほど新しく登場した種類になります。新しいものほど、治療効果が高く、副作用が少ない傾向があります。

  • 三環系抗うつ薬(TCA)
  • 四環系抗うつ薬
  • セロトニン遮断再取り込み阻害薬(SARI)
  • 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
  • セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
  • ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)
  • その他

三環系抗うつ薬(TCA)よりも前に、モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬)というものがあり、最初期の抗うつ薬とされていますが、現在ではほぼ使われていません。

三環系抗うつ薬(TCA)

今でも使われることのある抗うつ薬の中で最も古い系統で、1950年代に登場しました。セロトニン、ノルアドレナリンを活性化して抗うつ効果を得ます。効果が強く、効き目を感じやすい反面、副作用が強いのがデメリットです。

四環系抗うつ薬

四環系抗うつ薬はノルアドレナリンの増強を主な作用として抗うつ効果を発揮します。三環系抗うつ薬よりも、抗コリン性の副作用や心毒性が軽減された代わりに効果も弱くなりました。

セロトニン遮断再取り込み阻害薬(SARI)

セロトニン遮断再取り込み阻害薬は、セロトニンの再吸収を防いでセロトニンを増やすのに加え、5-HT2受容体を遮断する作用を持つ薬です。5-HT2受容体はセロトニンの受容体のひとつで、睡眠に関わるとされています。そのため、不眠症の改善にも効果が期待できます。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

選択的セロトニン再取り込み阻害薬はセロトニンの再吸収を防ぐことで、セロトニンを増やす薬です。そのため、セロトニン不足による不安や落ち込みに優れた効果を発揮しますが、ノルアドレナリンが関与する意欲や気力の改善にはほとんど作用しません。従来の抗うつ薬よりも副作用が少なく、よく第一選択薬として用いられます。服用初期に吐き気や下痢などの副作用が出ることがありますが、飲み続けるうちに身体が慣れて軽減されることが多いです。

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)

SSRIはセロトニンに作用しますが、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬はセロトニンとノルアドレナリンの両方を増強します。仕組みとしてはSSRIと同様に、各神経伝達物質の再吸収を防ぐ動きです。SNRIは痛みを軽減する作用もあり、疼痛治療に使用されることもあります。SSRIと同様に副作用は少ないですが、胃腸障害が多い傾向です。

ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)

これまでの薬は放出された神経伝達物質が再吸収をされるのを防ぐことで、相対的にセロトニンやノルアドレナリンを増やしました。それに対し、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬はそもそもの放出量を増やすように働きます。抗うつ薬の中では比較的効果が早めに現れると言われています。

SSRIやSNRIでは胃腸障害の副作用が多かったですが、NaSSAはその傾向は少なく、飲み始めに眠気と食欲増進が見られることが多いです。SSRIやSNRIと作用の仕方が違うため、NaSSA単剤で効果が薄い場合はSSRIやSNRIを併用することがあり、これをカリフォルニアロケット療法と言います。

抗うつ薬の紹介

抗うつ薬は様々な種類が開発、販売されています。ここでは、よく処方される薬を中心に、新しく承認された順番でご紹介します。

ボルチオキセチン(トリンテリックス)

2019年に承認され、トリンテリックスの商品名で販売されています。SSRIの作用に加え、セロトニンをメインに様々な受容体の働きを調整する薬です。分類としてはS‐RIM(セロトニン再取り込み阻害・セロトニン受容体調節)となります。うつ病、うつ状態だけでなく、パニック障害や社交不安障害、強迫性障害などにも効果が期待されています。1日1回の服用でよく、副作用もマイルドです。反面、効果も穏やかという特徴もあります。副作用は嘔吐や下痢などの胃腸障害が目立ちます。

トリンテリックス錠10mg(くすりのしおり)

ベンラファキシン(イフェクサー)

SNRIに分類。2015年に承認され、イフェクサーの商品名で販売されています。日本では新しい部類ですが、海外では1993年に発売となっており、それなりに歴史がある薬です。低用量ではセロトニン作用がメインですが、増量するにつれ、ノルアドレナリンの作用が強まる特徴があります。剤形は徐放性カプセル製剤というもので、薬の成分がゆっくりと体内に吸収されていきます。そのため、服用が1日1回でよく、副作用も出にくいです。

ベンラファキシン塩酸塩(おくすり110番)

エスシタロプラム(レクサプロ)

SSRIに分類。2011年に承認され、レクサプロの商品名で販売されています。セロトニンに作用することで、落ち込みや不安に対する効果が期待できる薬です。そのため、うつ病だけでなく、不安障害にも処方されます。効果と副作用のバランスがよいという特徴があります。副作用としては、嘔吐や下痢といった胃腸障害が多めです。作用時間が長いことから1日1回の服用となっています。

エスシタロプラム シュウ酸塩(おくすり110番)

デュロキセチン(サインバルタ)

SNRIに分類。2010年に承認され、サインバルタの商品名で販売されています。抗うつ効果の他に痛みを緩和する効果もあり、慢性的な疼痛の患者さんにも処方します。うつ状態に対してはノルアドレナリンの増強を期待して使用することが多いです。その効果から、気分が上がり過ぎて躁転してしまったり、不安や焦燥感が強まってしまったりといった副作用に注意が必要です。

デュロキセチン塩酸塩(おくすり110番)

ミルタザピン(リフレックス、レメロン)

NaSSAに分類。2009年に承認され、リフレックス、レメロンの商品名で販売されています。四環系抗うつ薬のミアンセリンを改良して作られた薬で、承認されている唯一のNaSSAです。SSRIやSNRIとは作用の仕方が異なるため、これらの薬で出やすい胃腸障害の副作用が出にくい傾向があります。その代わり、眠気や食欲増進による体重増加の副作用が見られます。不眠症や食欲低下している患者さんには、この副作用が良い方向に効果を発揮するケースもあります。

ミルタザピン(おくすり110番)

フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)

SSRIに分類。2008年に承認され、ルボックス、デプロメールの商品名で販売されています。効果はマイルドで落ち込みよりも不安に対する効果に期待ができる薬です。不安に対する効果から、強迫性障害や社会不安障害の患者さんにも使用します。最近発売された薬と比べると服用が1日2回と回数が多いです。副作用は他のSSRIと同様で嘔吐や下痢などの胃腸障害が目立ちます。

フルボキサミン マレイン酸塩(おくすり110番)

セルトラリン(ジェイゾロフト)

SSRIに分類。2006年に承認され、ジェイゾロフトの商品名で販売されています。効果と副作用のバランスが良く、不安に対する効果も期待できる薬です。そのため、うつ状態だけでなく、パニック障害や外傷後ストレス障害(PTSD)にも使用されます。副作用は少ない方ですが、やはり嘔吐や下痢などの胃腸障害が出やすく、性機能障害もやや目立ちます。剤形は錠剤の他、口腔内崩壊錠(OD錠)もあります。

塩酸セルトラリン(おくすり110番)

ミルナシプラン(トレドミン)

SNRIに分類。2000年に承認され、トレドミンの商品名で販売されています。特にノルアドレナリンへの効果に期待できる薬のため、意欲ややる気の低下している患者さんに使われます。ただし、作用が全体的にマイルドなため、重い症状の患者さんには処方されることは少ないです。痛みの抑制効果があり、日本では適応外となりますが、慢性的な痛みに使うことがあります。副作用は出にくい方です。排尿困難(尿閉)の副作用が出る場合があり、特に男性高齢者に注意が必要。

ミルナシプラン塩酸塩(おくすり110番)

パロキセチン(パキシル)

SSRIに分類。2000年に承認され、パキシルの商品名で販売されています。SSRIの中でセロトニン再取り込み作用が強い部類で効果を感じやすい薬です。反面、躁転や服用を中止する際の離脱症状に注意が必要。また、副作用もSSRIの中では出やすい方で、嘔吐や下痢などの胃腸障害、性機能障害が多いです。パロキセチンにはCR(Controlled Release)錠というものがあります。CR錠は徐放錠のことで、ゆっくりと薬が吸収されるようになっており、副作用が出にくい剤形です。

パロキセチン塩酸塩(おくすり110番)

トラゾドン(デジレル、レスリン)

SARIに分類。1991年に承認され、デジレル、レスリンの商品名で販売されています。セロトニンに作用するので、不安や落ち込みがあるうつ病患者さんに使われます。ただ、SSRIが登場してからは使用される機会が減っているのが現状です。副作用に眠気があり、それを利用して不眠の症状を改善する使い方があります。

トラゾドン塩酸塩(おくすり110番)

スルピリド(ドグマチール)

その他に分類。1979年に承認され、ドグマチールの商品名で販売されています。元々は胃薬として開発され、使用される中で低用量では抗うつ薬、高用量では抗精神病薬として機能することがわかったという少し変わった薬です。抗うつ薬としてはドーパミンへの作用があり、興味や意欲の改善に期待ができます。元が胃薬のため、SSRIやSNRIのような胃腸障害の副作用が出にくい特徴があります。逆に胃の運動が活発になり、食欲が増進して、体重増加のケースが見られます。また、高プロラクチン血症や錐体外路症状など、最近の抗うつ薬とは異なる副作用に注意が必要です。

スルピリド(おくすり110番)

ミアンセリン(テトラミド)

四環系抗うつ薬に分類。1983年に承認され、テトラミドの商品名で販売されています。ノルアドレナリンの放出を促す作用があるため、意欲や気力の低下の改善に期待できます。呼吸抑制と鎮静の副作用に注意が必要。抗ヒスタミン作用の強さから眠気が出やすいです。

ミアンセリン塩酸塩(おくすり110番)

アミトリプチリン(トリプタノール)

三環系抗うつ薬に分類。1961年に承認され、トリプタノールの商品名で販売されています。セロトニンとノルアドレナリンの両方に作用し、効果は強めです。うつ病だけでなく、夜尿症、末梢性神経障害性疼痛にも使われます。副作用として、胃腸障害や口の渇きなどがあり、SSRIやSNRIよりも生じやすいです。

アミトリプチリン塩酸塩(おくすり110番)

イミプラミン(トフラニール、イミドール)

三環系抗うつ薬に分類。1959年に承認され、トフラニールの商品名で販売されています。三環系抗うつ薬の中で最初に作られた薬で、SSRIが登場するまでは良く使われました。効果はアミトリプチリンよりはやや弱く、その分アミトリプチリンと比較して副作用も少ないとされています。うつ病以外に遺尿症にも処方されます。

イミプラミン塩酸塩(おくすり110番)

抗うつ薬の剤形

抗うつ薬の剤形は基本的には錠剤です。水がなくても飲める口腔内崩壊錠(OD錠)もあります。パロキセチンは体内への吸収をゆっくりにする徐放錠も開発されています。SNRIはカプセルの場合が多いです。また、一部の薬には散剤もあります。アナフラニールには注射剤(点滴)があり、病院で処置してもらう必要がありますが、即効性が期待できます。

抗うつ薬の副作用

抗うつ薬の副作用は以下のようなものがあります。

  • 便秘
  • 口渇
  • ふらつき
  • 眠気
  • 体重増加
  • 性機能障害
  • 吐き気
  • 下痢
  • 不眠
  • 離脱症状

非常に多いですが、これら全てが出やすいのではなく、薬の作用の仕方によって出やすい副作用が決まってます。三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬では便秘、口渇、ふらつき、眠気、体重増加。SSRIとSNRIでは、性機能障害、吐き気、下痢、不眠。NaSSAでは眠気、食欲上昇が見られやすいです。また、薬ごとに生じやすい副作用が異なるので、詳しくは処方時に主治医や薬剤師から説明を聞くようにしてください。

抗うつ薬の副作用は飲み始めに出やすく、服用するうちに慣れて副作用が少なくなる傾向があります。とはいえ、中には重篤な副作用の場合もありますので、副作用が出た際は主治医に相談するようにしましょう。

抗うつ薬の服用について、注意点

どんな薬でも言えることですが、薬は主治医の指示に従って服用してください。効果が現れるまで2~8週間ほどかかるため、飲み始めて効果が感じられないからと自己判断で服用を中止したりしないようにしましょう。また、抗うつ薬での治療は良くなった後も一定期間の服用が必要です。特に高齢者では再発率が高いため、継続した治療が重要となっています。このような特性もあるので、症状が改善しても主治医から中止の判断が下されるまでは服用を続けてください。

副作用や効果について気になる点があれば、主治医に相談しましょう。抗うつ薬は種類が多いので、合わない場合は他の薬に変更するなど調整してくれると思います。併用に注意が必要な薬もあるので、診察時に現在服用している薬を主治医に伝えるようにしましょう。抗うつ薬の効き目の強弱に影響が出る場合があるため、アルコールと一緒に服用するのは避けてください。

抗うつ薬についてお伝えしました。抗うつ薬は種類が多いのでよく処方されるものを中心に簡単に説明しており、詳細な説明は割愛している点ご注意ください。薬剤ごとに作用の仕方、副作用が異なるので、主治医や薬剤師の説明をしっかりと聞き、指示を守るようにしましょう。また、効果や副作用で気になる点がある場合は、主治医に相談してみてください。薬の変更など対処方法を考えてくれます。抗うつ薬の治療は改善しても飲み続ける必要があるなど、長期戦になりやすいです。治療は焦らず、主治医と二人三脚で挑んでいただけたらと思います。

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うつ病の薬物療法以外の治療法、電気けいれん療法(ECT)について

関連リンク

抗うつ薬(e-ヘルスネット(厚生労働省))
抗うつ薬(日経メディカル処方薬事典)
うつ病(MSDマニュアル家庭版)

-ブログ


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