しながわ在宅クリニック

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花粉症について知ろう

投稿日:2021年5月13日

国民病とも言われるようになり、多くの日本人が罹患している花粉症。冬が終わりに近づき、暖かくなってくると目のかゆみ、くしゃみなどの症状が出る方も多いのではないでしょうか。この記事では、花粉症とはどういうものなのか、代表的な花粉と飛散時期、治療法やセルフケアについてお伝えします。

花粉症とは

花粉症は、季節性アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎の1種。くしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどが主な症状です。他には、体のだるさや熱っぽい、喉がかゆい、集中力が低下するといった症状が出る方もいます。

人の体は、体内に入ってくる異物から守る免疫機能があります。花粉症の仕組みは、入ってきた花粉を異物と誤認し、抗体(IgE抗体と言います)が作られ、その抗体が許容量を超えると症状が出るというもの。許容量は個人差があります。蓄積される抗体が許容量を超えると発症するので、花粉症ではない方でも、許容量を超えた瞬間に花粉症になるということがあります。

代表的な花粉と飛散時期

天気予報などで飛散量を伝えるスギやヒノキはご存知の方も多いでしょう。あとは秋のブタクサも有名ですね。日本にはそれ以外にも花粉症を起こす樹木や草が、結構あります。スギやヒノキ花粉の時期でもないのに、くしゃみが止まらない、目がかゆいといった方は、他の植物の花粉症かもしれません。花粉症を起こす日本で代表的な樹木や草は、以下のようなものがあります。

花粉症の代表的な樹木、植物 ハンノキ属(カバノキ科)、スギ、ヒノキ、シラカンバ(カバノキ科)、イネ、ブタクサ(キク科)、ヨモギ(キク科)、カナムグラ(アサ科)
※クリック(タップ)で拡大します

関東では、上図のシラカンバを除いた7種類がよく飛散します。関東の時期ごとの花粉飛散量については以下のようになっています。

樹木、植物の花粉飛散時期※クリック(タップ)で拡大します

花粉症の治療

花粉症の治療には、症状を抑える対症療法と完全に治す根治療法があります。根治療法として、アレルゲン免疫療法があるのですが、治療に2~3年かかることから、薬で症状を抑える対症療法が一般的です。

薬物療法(内服薬)

花粉症の内服薬は主に以下のようなものがあります。

  • 抗ヒスタミン薬
  • ロイコトリエン受容体拮抗薬

抗ヒスタミン薬は、鼻水や目のかゆみを引き起こすヒスタミンが、ヒスタミン受容体にくっつかないように、邪魔をすることで症状が出ないようにするもの。抗ヒスタミン薬には第一世代抗ヒスタミン薬と第二世代抗ヒスタミン薬があり、比較的副作用が少ない第二世代抗ヒスタミン薬を処方するのがほとんどです。第二世代抗ヒスタミン薬の例としては、レボセチリジン(ザイザル)、フェキソフェナジン(アレグラ)、エピナスチン(アレジオン)など。抗ヒスタミン薬はしっかりと効果が出るまで、1~2週間かかります。そのため、花粉が飛散開始する2週間前から服用し始めると良いでしょう。

ロイコトリエン受容体拮抗薬は、血管を拡張させて鼻づまりを起こすロイコトリエンの働きを抑える薬。鼻づまりなど、鼻閉の改善に有効とされます。抗ヒスタミン薬と併用することも多くあります。効果が出るまで1週間くらいかかるため、抗ヒスタミン薬と同様に、花粉の飛散開始よりも早めに服用を開始しましょう。

薬物療法(点鼻薬)

点鼻薬は鼻に直接噴霧(スプレー)するお薬です。花粉症の点鼻薬は主に以下のようなものがあります。

  • 抗ヒスタミン薬
  • ステロイド
  • 血管収縮剤
  • ケミカルメディエーター遊離抑制剤

抗ヒスタミン薬は、内服薬と同様のもの。内服薬が優れたものに進歩してきているため、現在はほとんど処方されることもなくなりました。

ステロイドはアレルギーの抑制と抗炎症作用で、くしゃみ、鼻水、鼻づまりと鼻に出るアレルギー症状を抑えます。ステロイドと聞くと副作用などが危険なのではと思う方も多いでしょう。最近のステロイド点鼻薬は噴霧した場所で作用し、ステロイド成分が血液循環に乗りにくいようにできているため、副作用が非常に少なくできています。ステロイド点鼻薬は、即効性があるものではないので、花粉症シーズンは継続して使用するのが大事です。

血管収縮剤は、血管を縮める作用で鼻の通りをよくするものです。鼻づまりの解消に効果があり、即効性もあります。ですが、長期にわたり使用すると血管が広がって、鼻粘膜が腫れるリバウンドを起こし、鼻づまりが酷くなることがあるため、注意が必要です。市販の点鼻薬の多くが血管収縮剤を使用しています。注意書きをよく読み、指定された用法用量を守るようにしてください。

抗ヒスタミン薬が、ヒスタミンがヒスタミン受容体にくっつかないようにするのに対し、ケミカルメディエーター遊離抑制剤は、ヒスタミンが出てくるのを抑えるように働くお薬です。古くからあるため、安全性が高いのですが、効果が出るまで2週間ほどかかり、効き目もマイルドなため、処方頻度は少なくなってします。

点鼻薬のスプレーが苦手で避けている方もいると思います。最近はパウダー状の点鼻薬もありますので、診察時に液体の点鼻薬が苦手な旨を伝えると良いでしょう。

薬物療法(点眼薬)

花粉症の点眼薬は、抗ヒスタミン作用があるものが主に使われています。ステロイドの点眼薬もありますが、長期の使用で眼圧が上昇し、緑内障になる恐れがあるので、使用には定期的な通院、検査が必要となります。抗ヒスタミン点眼薬でも注意点があり、コンタクトレンズを使用した状態で点眼してはいけないものが存在します。コンタクトレンズをしている方は、診察時にその旨を伝えるようにしてください。効果は割りと早く出ますが、他の薬と同様に早めに使い始め、シーズン終わりまで使い続けると良いでしょう。

アレルゲン免疫療法

アレルゲン免疫療法は、減感作療法とも言われており、アレルギーの原因であるアレルゲン(花粉症の場合は花粉)を、少量ずつ投与していくことで、アレルギー症状が出ないようにしていくもの。「花粉症とは」の章で記したとおり、花粉症は花粉を異物として排除しようとアレルギー反応が出るので、花粉を少量ずつ投与して花粉が体内にあってもおかしくない、異物ではないと認識させていくというイメージをするとわかりやすいのではないでしょうか。長期にわたり効果が持続されている報告もあり、根治療法として期待されています。

アレルゲン免疫療法には、皮下免疫療法と舌下免疫療法があります。皮下免疫療法はアレルゲンを含んだ注射を低濃度から始めて、徐々に濃度を上げていく方法。最初は毎週1回、徐々に間隔をあけて、毎月1回と続けていきます。注射を打つので、医療機関に通う必要があり、根気が必要な療法となります。

舌下免疫療法は、アレルゲンを含んだ錠剤などを用いて、舌の裏側からアレルゲンを投与してく方法です。初回は重いアレルギー症状が出ないかなどを確認するため、医療機関で行いますが、以降は自宅で行えるため、皮下免疫療法と比べて続けやすくなっています。

皮下免疫療法と舌下免疫療法どちらも、治療期間は3~5年と長いです。治療を受けた人の80%で、症状の改善が見られています。長期戦になりますが、薬による治療であまり効果がないという方は、選択肢として考えるのも良いでしょう。

その他

薬物療法、アレルゲン免疫療法以外ですと、レーザーによる下甲介焼灼術や鼻中隔矯正術、下甲介粘膜切除術などがあります。下甲介焼灼術は、レーザーを使って鼻の粘膜を焼いて、花粉が粘膜に付きにくくする方法です。治療時間は15分程度と、入院せずに受けられるので手軽な部類に入ります。ただ、鼻粘膜は再生するものなので、シーズンごとに施術を受ける必要があります。

鼻中隔矯正術と下甲介粘膜切除術は、手術で鼻腔を拡大することで鼻づまりなどの症状を改善します。以前は全身麻酔で入院が必要でしたが、最近は局所麻酔で日帰り手術を行っている病院もあります。

自分でできる花粉症対策

花粉症の症状を抑えるには、薬など先ほどご紹介した治療法に頼る部分が大きくなります。ですが、日常生活の中で花粉を体内に入ってこないように工夫することで症状を軽くすることができます。

空気清浄機を使う

家の中に入ってしまった花粉には空気清浄機が力を発揮します。ご存知の方が多いと思いますが、空気清浄機は室内の空気を吸い込み、フィルターを通した排出することで空気を綺麗にしてくれる家電です。

選ぶポイントは適用床面積。適用床面積は、30分で空気を清浄できる部屋の大きさを示しています。大きいほど、パワーがあると言ってもよく、花粉対策であれば実際に使う部屋よりも大きな適用床面積のものがオススメです。

ですが、パワーが強くなると本体が大きくなったり、動作音が気になったりというデメリットもあります。花粉を除去できても、快適に過ごせなくては本末転倒なので、使用する環境に合わせて選びましょう。

使用に関しては、基本的には自動モードで24時間稼動させると良いです。寝室も静音モードなどで、ずっと付けておくことで朝までぐっすりと眠れると思います。また、外から帰ってきたときや洗濯物を取り込むなど、花粉が入ってくるような行動をした場合は、強めにすると良いでしょう。

外出時はマスクやメガネを使う

屋外は最も花粉と触れる環境ですので、外出時は花粉が体内に入ってこないようにマスクやメガネを使ってガードしましょう。マスクは、花粉シーズンはずっと使うことも考えると、花粉カットを謳っている使い捨ての不織布マスクが、費用の点からもオススメ。マスクをつけるときは、隙間ができないよう顔にフィットさせるのが大事です。

マスクやメガネ以外に、髪の毛に花粉が付着するのを防ぐ帽子も効果があります。また、コートなどのアウターは、素材がウールなどですと花粉が付着しやすいので要注意。花粉シーズンに着るアウターを買うときは、ツルツルした素材のものを選ぶと良いでしょう。

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外から帰ったときは花粉を払い落とす

外出から帰宅した際に重要なのが、花粉を家の中に入れないこと。帰宅時は玄関へ入る前に、衣服や髪(帽子)などについた花粉をはたき落としましょう。衣服用の粘着クリーナーを玄関に用意して使うと、さらに効果的。また、コートなどのアウターは玄関にコート掛けを設置して、室内に持ち込まないようにするのも良いです。

帰宅後は、すぐにシャワーで体や髪についた花粉を洗い流すのが理想的です。すぐにシャワーを浴びるのが難しい場合は、手洗い、うがい、洗顔をしましょう。

帰宅時以外に、洗濯物を取り込むときも洗濯物についた花粉が室内に入ってきてしまいます。帰宅時同様に、花粉をはたき落としてから室内に入れるようにしましょう。あるいは、花粉症シーズンは室内干しにするのというのもアリだと思います。

換気は早朝にする

花粉が入らないように窓を閉めて生活していると、外の空気を取り込んで換気をしたくなると思います。換気をする場合は、花粉の飛散量が少なめの朝にするのがオススメです。窓を開ける際は、2箇所の窓を10センチ程度で開けると空気の通りが良くなります。また、レースカーテンを付けてると花粉の侵入を抑えることができます。花粉の飛散量が少ない朝とはいえ、全く花粉が入ってこないというのは難しいので、換気をしたあとは掃除機をかけると良いでしょう。

規則正しい生活をする

バランスの良い食事、良質な睡眠を取り、適度に運動をするなど、規則正しい生活を心がけましょう。規則正しい生活は免疫機能を正常に保ち、花粉症の予防や症状の緩和に繋がるといわれています。飲酒は、血管拡張によって花粉症の症状を悪化させる原因にもなることもあるので、過度な摂取はしないように気をつけてください。

花粉症についてお伝えしてきました。花粉症の治療は薬による対症療法が主となっています。その薬も進歩していて、眠くなりにくいなど副作用が以前よりも抑えられるようになってきました。市販薬でも効果はありますが、症状が酷い場合はクリニックを受診することも検討してみてくださいね。また、薬だけに頼らず、マスクを着用したり、室内では空気清浄機を使ったりとセルフケアも併用していきましょう。

関連リンク

花粉症特集(厚生労働省)
花粉症対策のページ(東京都健康安全研究センター)
東京都の花粉情報(東京都アレルギー情報navi.)
妊娠中・授乳中の花粉症治療~選ぶべき薬は? | アレルラボ(大正製薬)

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