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冬の乾燥にご用心

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日本の冬は乾燥の季節です。天気予報でも湿度に関する情報が伝えられますね。乾燥した環境は感染症の感染リスクが上がったり、手荒れや肌荒れなどの肌トラブルに繋がったりします。そこでこの記事では、日本の冬が乾燥する理由や乾燥によって起こる病気、乾燥対策についてお伝えします。

冬が乾燥する理由

日本の冬は西高東低の気圧配置になりやすく、西に発生する高気圧はシベリア気団と呼ばれ、非常に冷たい空気を持っています。その冷たい空気が西から東に向かって流れるのですが、日本海側で雪を降らせてから流れてくるため、カラカラに乾燥した空気となります。冬が乾燥するのはこれが大きな原因です。また、冬は気温が低いため、空気中に含まれる水分量が減少するのも乾燥に繋がります。

気圧や温度以外に、もう1つ冬が乾燥する要因となっているのが、暖房器具の使用。暖房を使って部屋を暖めると空気が抱えられる水分量は増えます。しかし、水分自体は増えないために空気における水分割合は低下し、湿度が低い状態になってしまいます。ちょっと難しい言葉で言うと、相対湿度が下がるといいます。

冬に乾燥するのは空気だけではなく、人の体も乾燥します。人体の乾燥は、上記した空気の乾燥に加えて、寒さが影響しています。寒くなると皮膚から熱が出て行くのを抑えるために、血液の循環が抑えられ新陳代謝が落ちます。そうすると皮膚の保湿成分が作られにくくなり、肌から水分が蒸発しやすくなるので、乾燥してしまうのです。

乾燥が原因の病気

乾燥していることが直接の原因となる病気というのはほとんどありません。ですが、空気が乾燥した環境は、様々な病気に罹りやすくなる要因の1つとなります。いくつか代表的なものをご紹介します。

風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスなどの感染症

風邪やインフルエンザ、2020年から猛威を振るっている新型コロナウイルスなどに感染する経路に飛まつ感染があります。咳やくしゃみで空気中に飛び出たウイルスは湿度が高いと、すぐに地面に落ちるため感染リスクが下がります。しかし、乾燥していると飛まつの水分が乾燥した空気に奪われるため、ウイルスが軽くなり空気中を漂いやすくなります。また、喉の粘膜はウイルスを防御する役割も持っていますが、乾燥するとその機能が弱くなってしまいます。

▼インフルエンザ関連記事
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手荒れや肌荒れなどの肌トラブル

肌が乾燥していると、ひび割れやあかぎれなどの肌トラブルが生じやすくなります。肌に水分があると皮膚が伸縮しやすいのですが、乾燥するとその機能が弱くなり、関節を曲げるなどの動きに皮膚が付いていけずに切れてしまいます。また、肌が乾燥していると、肌を保護するバリアが十分に機能せず、刺激に敏感になるため、かゆみが生じやすくなります。

脱水症

夏は汗をかくので水分が外に出て行ってるのがわかりやすいですが、冬の乾燥した環境でも肌から水分が蒸発していて、知らず知らずのうちに脱水症になってしまうことも。水分が外に出て行ってるのが目に見えないこと、気温が低いと喉の渇きを感じにくいことなどから、水分摂取量が少なくなるのも脱水症に繋がります。

乾燥予防と対策

乾燥は空気が乾燥している状態と、人の体が乾燥している状態の2つあります。それぞれに対策方法があり、どちらか片方ではなく両方の対策をすることが大事です。部屋の湿度は40~60%が適していると言われています。加湿し過ぎも良くないので、環境に合わせた対策をしましょう。

加湿器を使う

乾燥対策でまず思い浮かぶのは加湿器ではないでしょうか。加湿器は機器に水をセットすると、その水を空気中に放出して加湿するものです。放出の仕方が複数あり、よくあるのはスチーム式と超音波式、気化式の3種類。スチーム式は水をヒーターで加熱して水蒸気にして加湿する方法で、加湿する力は強いです。超音波式は水に超音波を当てて細かい霧にして加湿するもので、気化式は水を含んだフィルターに風を送り込んで加湿します。

スチーム式は素早く加湿できる反面、加湿し過ぎで結露が発生しやすく、超音波式や気化式は消費電力が少ないのがメリットですが、手入れをちゃんとしないと雑菌が繁殖し、その菌を散布してしまう危険があります。このようにそれぞれ長所短所がありますので、ご自身の環境に合わせた加湿器を選ぶようにしましょう。湿度センサーの付いたスチーム式は多くの方にオススメです。また、加湿器を使うほどでもない場合は、濡れたタオルを干したり、洗濯物を部屋干しにするという方法も有効です。

保湿クリームの使用

手荒れや肌荒れには、保湿クリームなどの保湿剤が効果的です。保湿剤は乾燥によって弱くなったバリア機能を補ったり、皮膚の水分が失われないように覆ったり、皮膚に水分を与えるといった作用をします。市販薬、処方薬ともにヘパリン類似物質、尿素、ワセリン等の油分など様々な種類のものがあります。市販薬でどれを選べば良いかわからない場合は、ドラッグストアの薬剤師などに相談すると適したものを提案してもらえます。また、病状によっては薬を処方することができるので、市販薬で改善されなかったり、病状が酷い場合はクリニックの受診もご検討ください。

使い方は適量を1日に数回塗ります。乾燥していると、たくさん塗ってしまいたくなりますが、適量を心がけてください。手を洗った後や、お風呂上りは特に乾燥しやすいので、保湿剤を使って保護しましょう。また、睡眠中に乾燥してしまうこともあるので、寝る前に使うのも良いです。

マスクの着用

新型コロナウイルスで品切れが続出したマスク。このマスクも乾燥対策アイテムの1つです。マスクをすると呼吸に含まれる水分がマスクと口の間に留まることで、乾燥を防ぎます。湿度がある空気を吸うことで喉の潤いが保たれ、ウイルスを防御する機能も低下することなく働いてくれます。

▼マスク関連記事
新型コロナウイルス感染症対策におけるマスクの話
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水分補給をする

脱水症を防ぐのに有効なのは、水分を摂取することです。寒いと喉の渇きを感じにくくなりますので、意識的に水分補給をするようにしましょう。体も温まるホットドリンクにするのも良いです。アルコールやカフェインは利尿作用が強いため、水分補給には適していないのでご注意ください。

その他

乾燥対策は他にも以下のようなものがあります。

  • お風呂の設定温度は40度以下
  • エアコンではなく石油ストーブを使う
  • 温度変化を大きくしない
  • 植物を置く

上記以外に、石油を燃焼させると水が発生するため、エアコンではなく石油ストーブを使うというのもあるのですが、火傷などといった怪我のリスクもあるので、万人にはオススメしがたいです。特に小さなお子さんがいたり、認知症の患者さんがいたりするご家庭はエアコンの方が安心して使えると思います。

乾燥についてお伝えしてきました。乾燥は大きく分けて空気が乾燥している状態と、人の体が乾燥している状態があります。どちらか一方ではなく、両方に対策をするのが大事です。乾燥対策は病気の予防にもなるので、乾燥していると感じたら早めに加湿器の利用や保湿クリームを塗るなどしましょう。

関連リンク

高齢者施設の感染症予防を踏まえた室内湿度の改善(国立保健医療科学院)
冬季のオフィス環境における低湿度の実態と対策について(労働安全衛生総合研究所)
健康・快適居住環境の指針(東京都福祉保健局)

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